リーンの翼全話鑑賞

富野監督のバースデースペシャルということで、『リーンの翼』全6話が無料配信されていたので、この機会に通しで全部見ました。
以下、ネタバレ注意。











いい意味でも悪い意味でも富野作品らしい作品でした。ただ、全6話のDVDとしては詰め込み過ぎですね。地上界での空母独立騒動と、コモン界でのホウジョウと反乱軍の対立、さらにホウジョウ内部の確執に、エイサップとリュクス双方の親子の問題、そしてサコミズ王の妄執など、いくらなんでも盛りだくさんすぎます。1クールものなら丁度良かったんでしょうが、3時間弱の尺だと厳しいです。結局ラストもエイサップとサコミズ王のドラマには決着がつきましたが、後は投げっぱなしでしたしね。バイストン・ウェル側の問題はサコミズ王が消えただけで何も解決してないし。後半はサコミズ王のドラマに焦点を当てすぎてエイサップとリュクスのドラマが弱くなってましたし。
まあ、完全にサコミズ王のドラマとして見ると結構まとまってるんですけどね。結局サコミズ王って、特攻で死に損なって、ずっと死に場所を探してた人間だと思うんです。その為には、一目故郷を見て死にたかったんでしょうね。多分米国を倒すとか日本を正すっていうのはこじつけの理由だったような気がします。結局最後は祖国を守って死ぬことができたんですから、サコミズ的には満足だったんでしょう。
今回の東京総攻撃を見てて思ったんですが、富野監督の中には戦後の日本のあり方について、何か忸怩たる思いでもあるんでしょうか。東京タワー両断や「緑が全く見えない!」とか「東京をコンクリートで埋め尽くして!」というサコミズの台詞って、半分は富野監督の本音じゃないかと思うんです。なんかそういったものを全て破壊して一度ゼロからやり直したいっておもいがあるのかな、と。それに対する「力とは未来を築くためのものだ」とか「東京がこうなったから満州を占領しなくても倍になった人口が生きていける」っていうのも間違いなく本音なんでしょうけど。それにしても、東京を覆い尽くすオウカオーの羽根は月光蝶そのものでした。よっぽど蝶というモチーフが気に入ったんでしょうか。
それと、黒富野時代と違って死人がほとんどいませんね。例えばダンバイン時代なら間違いなくコドールやコットー将軍、マキャベルあたりは殺されてたでしょうし、場合によってはアマルガンやロウリあたりも死んでても不思議じゃない。それが全員生き残ってますもんね。その辺は、やっぱり変わったなあと思います。
あと、ラストシーンは異世界ファンタジーものとしては王道なんですけど、ちょっとエイサップには辛すぎるかなと思います。なんかこの後、エイサップが第2のサコミズ王化する可能性もありそうなんですよね。リュクスに会いたいという妄執に支配されて、無理矢理オーラロードを開こうとするっていう。だから素直には納得できませんでした。
なんか色々と文句言ってるように見えますが、衝撃的な作品であることは間違いありません。見ると色々と考えさせられる作品です。